椎間板ヘルニアはどんな病気なの?
特にダックスフンドを飼っている飼い主さんなら1度は意識したことのある病気ではないでしょうか。
わたしもダックスフンドの飼い主として椎間板ヘルニアは知っているつもりでしたが、実際は一般的に広く言われている治療法・予防法以外にも知らないことがたくさんありました。
今回、愛犬が椎間板ヘルニアを発症したことで自分の無知を自覚した飼い主が知っておきたかった椎間板ヘルニアの知識をまとめました。
同じダックスフンドを飼っている人や愛犬が椎間板ヘルニアを発症した飼い主さんにぜひ読んでもらいたいです。
椎間板ヘルニアってどんな病気?
椎間板ヘルニアは脊椎から椎間板が飛び出る病気です。
脊椎は頚椎7個、胸椎13個、腰椎7個、仙椎1個からなり、脊椎の間に椎間板があります。
椎間板には運動した時の衝撃を吸収するクッションのような働きがあります。
脊椎の中には空洞がありその中に脊髄(神経)が通っています。
脊椎から飛び出した椎間板は脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺が起こります。
椎間板ヘルニアは2つのタイプがあります。
- HansenI型
- HansenII型
ダックスフンドの多くはHansenI型です。
HansenI型
ダックスフンドなどの軟骨異栄養犬種に多いタイプです。
軟骨異栄養犬種
ダックスフンドは短足にするため、人為的に軟骨異栄養犬種にした犬種です。軟骨異栄養犬種は足が短くなるだけでなく、椎間板の変性が早く始まる欠点があります。このため遺伝的に椎間板ヘルニアになりやすいのです。
HansenI型は2歳頃から椎間板の変性が始まり、水分が抜けて石灰化していきます。
石灰化した椎間板は何かのきっかけで飛び出し脊髄を圧迫します。
3〜7歳の若い年齢で急に発症するのが特徴です。
思ったより若いですよね…
このタイプは急に症状が出て一気に進行するため、突然強い痛みに襲われたり、麻痺して急に歩けなくなることもあります。
遺伝的に椎間板の変性が起こりやすいため、一度治療をしても再発を繰り返しやすくなります。
HansenII型
HansenII型の椎間板ヘルニアは椎間板の線維が厚くなり変形して脊髄を圧迫することで痛みや麻痺が起こるタイプです。
こちらは加齢とともに椎間板が変性していくため、初めは痛みが出て徐々に麻痺が出てきます。
比較的進行は緩やかで、少しずつ症状が出てくるのが特徴です。
老化以外にも肥満や滑りやすい床、激しい動きが原因になります。
椎間板ヘルニアのグレード
椎間板ヘルニアは症状によって5つのグレードに分けられます。
グレード1
背中に痛みがあります。散歩や段差など、いつもはできる動きを嫌がります。触られると嫌がったりキャンッと鳴くこともあります。
グレード2
後足の感覚が鈍くなり、ふらついたり足の甲を引きずりながら歩きます。
グレード3
後足が麻痺し、前足だけで歩こうとします。自力で排泄はできます。
グレード4
後足が完全に麻痺し、前足だけで歩こうとします。麻痺した足の痛覚が鈍くなります。自力で排泄することができなくなります。
グレード5
後足が完全に麻痺し、麻痺した足の痛覚(深部痛覚)がなくなります。足をつねっても全く反応がありません。
グレード1でなんとなく違和感を感じても椎間板ヘルニアだと気づかず、グレード2以降になって病院を受診する人が多いです。
椎間板ヘルニアは早めに治療すれば治る可能性が高くなります。
グレード1の症状を頭に入れておき、少し異変を感じたら動物病院の受診を考えてみてくださいね。
椎間板ヘルニアの治療法
椎間板ヘルニアの治療法はグレードによって変わってきます。
グレードによる改善率は以下の通りです。
グレード | 内科療法 (回復までの期間) | 外科療法 (回復までの期間) |
---|---|---|
グレード1 | 100% (受傷から3週間) | 100% |
グレード2 | 84% (受傷から6週間) | 100% |
グレード3 | 100% (受傷から9週間) | 95% (術後1週間) |
グレード4 | 50% (受傷から3週間) | 90% (術後2.5週間) |
グレード5 | 7% (受傷から3週間) | 50%(48時間以内) (術後2週間) 6%(48時間以降) |
グレード1~3では内科療法でも外科療法でも症状の改善には大きな差はありません。
しかし、足先の感覚が鈍くなるグレード4以降は内科療法では良くならない確率が高くなり手術がすすめられます。
以前は椎間板ヘルニアの手術は発症後48時間以内に行うのが望ましいとされていましたが、最新の研究で早期に手術しなくても回復率は低下しないことが分かっています。
内科療法
内科療法はステロイドやビタミン剤の投薬・安静で治療をします。
病院によって使う薬は変わってきますが、以下のような薬が処方されます。
- 炎症を抑える抗炎症剤
- 痛みを和らげる鎮痛剤
- 神経の修復を促すビタミンB剤
内科療法で大切なのは安静にすることです。
ケージレストと言われ、ケージの中で動ける範囲を制限して過ごすのが理想的です。
ケージの中では安静にできない場合はケージの外で様子を見ますが、そのときは動ける範囲を制限する工夫が必要です。
隣で見てられる人がいればついていてあげるのが安心ですが、リードをつけて机の足にしばっておくことで動く範囲を制限することができます。
その子の性格に合わせて安静に過ごす方法を変えてみましょう。
リスク
使う薬によっては食欲不振、嘔吐、肝機能障害などの副作用が出ることがあります。
薬を使ってから様子がおかしい場合は獣医師に相談しましょう。
中でもステロイドは治療効果が高いですが、副作用も出やすい特徴があります。
多飲多尿、嘔吐、下痢、感染症になりやすい、高血糖、高血圧、肝臓の数値の上昇、骨粗鬆症、脱毛など様々な副作用があります。
こんなに副作用が多い薬は使いたくない!と思う方も多いですが、飲む期間を短くしたり頓服にしたり飲み方を工夫することで副作用を最小限に抑えることができます。
不安がある場合は獣医師に相談してくださいね。
費用
内科療法でかかる金額は5,000円〜20,000円くらいです。
診察代と薬代がメインであとは安静になるため、費用は比較的安く抑えられます。
手術
グレードの高い椎間板ヘルニアの場合、手術が勧められることがあります。
手術は脊髄が圧迫を受けている部分の背骨を削り、飛び出した椎間板物質を取り除くことで圧迫をなくす片側椎弓切除術を行います。
手術後は5〜7日ほど入院になり、順調なら自宅に戻ってリハビリになります。
リスク
椎間板ヘルニアの一般的な手術自体は特別難しい訳ではないため、手術自体が失敗するリスクは低いです。
手術をするにあたり全身麻酔をかけるため、高齢になるほど麻酔のリスクは上がります。
また、心疾患や呼吸器疾患、肝機能障害、肥満などの病気がある子も麻酔をかけると負担がかかります。
費用
手術にかかる費用は20〜50万円ほどになります。
病院によって変わりますが、手術前のCT・MRI検査、レントゲン、血液検査の検査代も合わせた額になります。
うちのカニンヘン・ダックスフンド(3.5kg)は手術をした場合、トータル約30万円かかると説明がありました。
内科療法に比べると格段にお金がかかります。
鍼灸治療
鍼灸は人の腰痛や肩こりの治療法として知られていますが、犬猫にも効果があります。
椎間板ヘルニアではその効果が知られていて、手術しないと治らないと言われていた子が鍼灸治療で歩けるくらいに回復した事例もあります。
鍼や灸で体のツボを刺激することによって神経系が刺激され鎮痛物質や脳内ホルモンが作られるため、痛みが和らいだり免疫力を上げる効果があります。
1回の施術で20〜60分ほどかかり週1回〜月1回通院することになります。
手術をやりたくない場合には有効な治療法のひとつです。
ただ、鍼灸は取り入れている動物病院がまだ少ないのが現状です。
治療を受けさせたいと思っても鍼灸をやっている病院が近くにないこともあります。
リスク
手術に比べるとリスクは低く安全な治療法です。
麻酔をかけないため高齢な子でも安心して施術を受けられます。
しかし、知らない人が苦手で触られるのを嫌がる子にとっては施術自体がストレスになってしまいます。
また、効果には個体差があるため鍼灸治療を受けても良くならないこともあります。
費用
鍼灸にかかる費用は1回3,000円〜10,000円で週に数回〜1ヶ月に1回くらいのペースで通院するためトータルで見ると5〜10万円ほどかかります。
再生医療
椎間板ヘルニアの最先端の治療法として再生医療があります。
再生医療は犬の身体から細胞(幹細胞)を取って培養し、再び身体に戻すことで病気などで失われた機能を回復させる治療法です。
椎間板ヘルニアグレード5で重度麻痺のある子は神経が壊死しています。
壊死した神経は元に戻らないため、再生医療で神経を再生させる治療が効果的です。
リスク
一般的な再生医療は点滴と同じように静脈から細胞を入れます。
麻酔をかけないので安心して治療できます。
治療効果を高めるために麻酔をして障害を受けた場所に直接投与する方法もあり、こちらは麻酔のリスクが伴います。
費用
費用は30〜60万円かかります。
最先端の医療なので治療費も高いです。
ペット保険の適用外となることが多いので、再生医療を受ける場合はあらかじめ確認しておきましょう。
椎間板ヘルニアを予防するには?
椎間板ヘルニアは再発する可能性が高い病気なので、良くなっても日々の生活に気をつけないとまた発症してしまいます。
椎間板ヘルニアを予防するには背骨に負担をかけないことが一番です。
椎間板ヘルニア予防のポイント
- 段差を避ける
- 激しい運動を避ける
- たて抱っこをしない
- 滑らない床にする
- 太らせないようにする
- 関節にいい成分を取り入れる
このポイントをおさえることで椎間板ヘルニア発症のリスクを下げることができます。
段差を避ける
わんちゃんにとって階段などの段差は腰に負担がかかることは有名ですよね。
椎間板ヘルニアになるとこれまで問題にならなかったような小さな段差でも嫌がるようになります。
それだけ段差は腰にとって良くないものなのです。
普段の生活では階段の上り下りはもちろん、家の前の段差やお店の前の3段くらいの段差など小さな段差にも気をつけたいですね。
激しい運動を避ける
椎間板ヘルニアでは激しい動きは禁物です。
先ほどの段差もそうですが、激しく動くことで背骨に負担がかかります。
お散歩でぐいぐい引っぱる、ソファへピョンっと登る・ジャンプする、インターホンが鳴って急に鳴くのも危険です。
特にジャンプや急な動きは椎間板ヘルニアを発症する引き金になります。
好奇心旺盛で元気なダックスフンドの動きをセーブするのは難しいかもしれませんが、頭のいい犬種なので徹底して教えればわかってくれる子も多いですよ。
たて抱っこをしない
たて抱っこはダックスフンドで特に負担が大きくなります。
胴長なダックスフンドは抱っこしたときに前足が高くお尻が低い位置になってしまいがちです。
このような体勢はたて抱っこと言われ背骨に負担がかかる抱き方です。
普段は水平な背骨が縦になることで全体重が腰にかかります。
そうすると椎間板がつぶれて飛び出しやすくなります。人で腰痛が多いのと同じですね。
わんちゃんを抱っこする時には必ずお尻に手を添えて持ち上げ、前と後ろの手を同じ高さにするように心がけましょう。
滑らない床にする
知っている人も多いかもしれませんが、わんちゃんの生活環境でフローリングは腰に良くありません。
掃除のしやすいフローリングは滑って腰や関節を痛める原因になります。
滑らない対策としてフローリングの床にコーティングをしたりマットを敷くことができます。
マットは手軽で好きなところに敷けるのが魅力です。
わたしはSANKOの撥水タイルマットを使っています。
薄いですがわんこが歩いたり掃除機をかけても動かなくて、これまで使った中では1番良かったです。
撥水加工もしてありおしっこをしてしまってもすぐに染み込まずありがたいです。
コーティング剤はホームセンターなどで売っていますが、わんちゃんが滑らなくなるほどの効果が見られるものは少ない印象です。
それでもRINREIのコーティング剤は滑らなくなる効果が見られました。
半年に1度くらいの塗り直しが必要になりますが、簡単に塗れるのでおすすめです。
太らせないようにする
肥満は椎間板ヘルニアだけでなく様々な病気を引き起こします。
最近では肥満自体が病気として捉えられるようになってきたほどです。
ぽちゃっとしていてかわいいからと愛犬を太らせてしまうと、重くなった体が腰に大きな負担となります。
少しぽっちゃりしてきたかなと感じたらダイエットしてみましょう。
いつものおやつやごはんを少し減らしたりお散歩の時間を延ばしてみたりできることから少しずつ始めます。
一気にやりすぎると逆に体にとっても負担になってしまうので不安な場合は動物病院の先生に相談してみるのもいいですね。
こんなことでは病院に行きづらい、病院に行っている時間がない、という人はオンラインサービスを活用することもできます。
だいじょうぶ?マイペットは全国の獣医師からアドバイスがもらえるペットの相談サイトです。
悩みを投稿すると登録されている獣医師さんが回答してくれるシステムになっています。
もっと気軽にダイエットのことを知りたいなら、【DOQAT】がお手軽です。
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ペットに関する悩みを投稿すると、その知識を持っている人が回答してくれます。
みなさんと同じようにわんちゃんを飼っている人が実際に経験したことをもとにアドバイスしてくれるので、ネット上に書かれていないリアルな情報が見つかることもありますよ。
登録は無料でできるので愛犬の情報収集の場所に活用してくださいね。
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わたしも使っていますが、同じ悩みを持っている人と情報を共有できるのでおもしろいし、参考になることがたくさんありますよ。
関節に良い成分を取り入れる
椎間板ヘルニアを食事の面から予防することもできます。
椎間板はタンパク質とビタミンCからできています。
いつものフードに鶏肉やブロッコリーをトッピングすると手軽にタンパク質やビタミンCを補給できます。
トッピングする余裕がないならサプリメントも有効です。
グルコサミンやコンドロイチンといった関節に良い成分や、動物病院でも処方されるアンチノールプラスも関節にいいサプリメントとして有名ですね。
うちの子が使っているサプリメントはモエギキャップです。
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椎間板ヘルニアについてのまとめ
椎間板ヘルニアは5つのグレードがあり治療法も変わってきます。
◎ 発症してしまったら愛犬に合った治療法を考えてみましょう。
- 内科療法
- 手術
- 鍼灸治療
- 再生医療
◎ 治療後も再発が怖い病気なので予防も大切です。
- 段差・激しい運動を避ける
- 滑らない床にする
- 太らせないようにする
- 関節にいい成分を取り入れる
椎間板ヘルニアは治療すれば良くなる可能性が高い病気です。
特にダックスフンドはいつなってもおかしくない犬種なので備えをしておきたいですね。